この記事の結論
- お客としてカットを受ける側は、施術するのは美容師・理容師本人のため基本的に気にする必要はない
- 美容師・理容師を目指す側では、シザー(はさみ)に「刃の重なり」という左利き特有の壁があり、専用モデルは右利き用よりやや割高になりやすい
- 国家試験の実技要項そのものに利き手の規定はなく、左手でのシザーワークも制度上禁止されていない
- くし・クリッパー(バリカン)は左右差の小さい道具で、身構えすぎなくていい。一方で西洋剃刀(レザー)は右手前提の展開が中心
この記事は2つの立場の左利きの人に向けて書いています。
ひとつは美容室・理容室で施術を受けるお客としての立場、もうひとつは美容師・理容師を目指す、あるいは実際に働いている立場です。
この2つは悩みどころがまったく違うため、順番に整理していきます。
1. 客として施術を受ける場合、基本的に困ることは少ない
結論から言うと、お客としてカットやシェービングを受ける側は、あまり心配しなくて大丈夫です。
はさみを実際に動かすのは美容師・理容師本人であり、お客自身の利き手がカットの仕上がりに直接影響することはほとんどありません。

自宅でのセット・ブローは自由に工夫してよい
くしやドライヤー、ヘアアイロンといった、自宅で自分自身のセットに使う道具は左右対称な形をしたものがほとんどです。
どちらの手に何を持つかは完全に自分の好みで決めてよく、美容師から教わったセットの仕方が右手主体だった場合も、自分がやりやすい持ち方に置き換えて練習すれば問題ありません。
問診票の記入・ケープの向きなど、細かい気配りは伝えれば対応してもらえる
問診票への記入で左手が動かしにくい台の向きになっている、ケープの結び目が右利き前提の位置にあるといった細かな点は、店側に伝えれば柔軟に対応してもらえることがほとんどです。
遠慮せずひと声かけてみることをおすすめします。
2. 美容師・理容師を目指す場合、シザーには「刃の重なり」の問題がそのまま当てはまる
一方、美容師・理容師を目指す側にとっては話がまったく変わってきます。
美容師・理容師が使うシザー(カット用のはさみ)は、キッチンバサミや裁縫バサミと同じ「刃の重なり」の構造を持つ刃物です。

美容専門学校のカリキュラムは右手前提が中心
美容専門学校・理容専門学校のカット実技は、基本的に右手でシザーを持つ前提でカリキュラムが組まれています。
教材や教員のお手本も右手用が中心のため、左手でシザーを持ちたい場合は、入学前や入学後の早い段階で学校側に相談しておくと、指導方針のすり合わせがしやすくなります。
左利き用シザーの価格帯、実際のブランド例
美容師用シザーのメーカーの中には、左利き用として刃の重なりを逆にした「レフティシザー」を扱っているところが複数あります。
たとえば東京理器(Butterfly)の左利き用モデルは4万円台、飛燕シザーズの左利き用モデルは2万円台前半、DEEDSは1万円台後半という価格帯で展開されており、上位モデルになると10万円を超えるブランドもあります。
右利き用シザーに比べてラインナップが少なく、試し切りができる店舗も限られるため、購入前にできるだけ実際に手に取って試すことをおすすめします。
3. 国家試験で左手のシザーワークは認められるのか
左利きで美容師・理容師を目指す人が一番気になるのは、国家試験の実技で左手を使っても不利にならないかという点ではないでしょうか。
結論から言うと、理容師・美容師試験研修センターが公表している実技試験の要項そのものには、利き手に関する規定は見当たりません。
左手にシザーを持って受験すること自体が制度上禁止されているわけではなく、実際に左利き用シザーを使って受験する人もいます。
採点は作品の仕上がり状態と用具・衛生の規格適合で行われるため、シザーをどちらの手で持つかそのものが減点対象になるわけではありません。

「右手前提の教材」を補う左利き向けの対策講座がある
制度上の問題はなくても、国家試験対策の教材やお手本動画のほとんどは右手を前提に作られています。
この差を埋めるため、左利き受験者向けに特化したカット・ワインディング(パーマロッド巻き)の対策講座や解説動画が実際に存在し、専門学校によっては左利き用シザーを用意し左利きの生徒の指導に慣れた講師が対応しているところもあります。
受験対策を始める前に、通う予定の学校が左利きの生徒への指導実績を持っているかを確認しておくと、独学で苦労する場面を減らせます。
4. くし・クリッパー・レザー、道具ごとに左右差はこれだけ違う
シザー以外の道具は、種類によって左右差の出方が大きく異なります。

くしは構造上そもそも左右差がない
くしは単なる歯のついた棒状の道具で、刃の重なりのような構造上の左右差がそもそも存在しません。
左右どちらの手で持ってブロッキングしても、機能そのものに差は出ません。
左利きだからといって、くしの持ち方まで身構える必要はありません。
クリッパー(バリカン)はコードの取り回しに軽い癖がある程度
クリッパーも刃が振動しながら髪を切る仕組みで、左右どちらの手で持っても基本的な切れ味に差は出にくい道具です。
コード付きモデルの場合、本体の後方からコードが伸びる位置によって、利き手側にコードが回り込みやすいかどうかがわずかに変わることがある程度で、アタッチメント(刈り高さ調整用のガード)の着脱にも大きな左右差はありません。
西洋剃刀(レザー)は右手前提の展開が中心
理容室でのシェービングに使う西洋剃刀(レザー)は片刃構造のため、理屈の上では左右で使用感に差が出てもおかしくない道具です。
ただし調べた範囲では、シザーのように左利き専用モデルを明確に展開しているメーカーは見つからず、多くの左利き理容師は右手でレザーを扱う練習をしているという声が一般的です。
5. 現場では「利き手を変える」練習をする人もいるが、今は必須ではない
かつては左利きの新人にシザーの持ち方を右手へ矯正させる指導が一般的だった時期もあったようですが、今は事情が変わってきています。
現在は左利きのまま採用し、左利き用シザーで働くことを認めるサロンがほとんどだという声が多く聞かれます。
一方で、右利きの同僚と同じ空間で働くサロンでは、椅子の配置や動線が右手でカットする前提で組まれていることも多く、利き手を変える練習をあえて選ぶ人も一定数います。
無理に右手へ矯正しようとして手首や指を痛めたという経験談も見られるため、変えるかどうかは自分のペースで判断することが大切です。
「変える」か「そのまま伸ばす」か、判断のポイント
利き手を変える練習を選ぶ人は、右利き用シザーの選択肢の多さや、右利きの同僚と同じ動線で働ける気軽さを理由に挙げることが多いようです。
左のまま伸ばす人は、コームを持つ非利き手側の細かい作業がむしろやりやすくなるという意見や、無理な矯正で腱鞘炎になりかけた経験を理由に挙げています。
「左のまま働く」場合の動線の工夫
利き手を変えず左手のまま働く道を選ぶ場合は、鏡台やお客の椅子との位置関係を左手用に調整してもらえるサロンかどうかを、就職活動の段階で確認しておくと入社後のミスマッチを防ぎやすくなります。
6. まとめ:客側は気にしすぎなくていい、目指す側は早めの情報収集が近道
お客としてカットを受ける側は、施術するのが美容師・理容師本人である以上、利き手を理由に不安になる必要はほとんどありません。
一方で美容師・理容師を目指す側は、シザーの「刃の重なり」という道具の壁、国家試験での扱い、利き手を変えるかどうかという働き方の選択の3つに向き合うことになります。
専門学校選びや就職活動の早い段階で、レフティシザーの取り扱いや左利き向けの指導実績を確認しておくことが、遠回りを避ける一番の近道です。
刃物まわりの左右差の基本的な考え方については、あわせて次の記事も参考にしてください。
手芸・裁縫の道具選びとも共通する部分が多くあります。
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